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『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』かつて、国境を越えて「五族協和」を目指した若者たちがいた。

Posted by erkazm on 25.2016 新刊書評 0 trackback
五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後
三浦 英之
集英社
売り上げランキング: 5,168


「青雲の志」という言葉は、徳を磨き立派な人物を目指し、行く末は立身出世を夢見る若者によく使われる。だが、本当に「青雲の志」を持つ青年は滅多にいるものではないし、簡単に叶えられるものでもないだろう。

だが、そんな青年たちの物語は私たちの心を熱くする。夢にたどり着けなかったにせよ、初心に抱いた真っ直ぐな心情はまぶしい。
 
第13回開高健ノンフィクション賞の受賞作『五色の虹』は「青雲の志」を抱いた青年たちの心と、50年後の物語である。

1931年、満洲事変が起こり、それを契機に満洲国が建国された。清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀を元首とし、実質は日本の支配下となる。北と東はアムール川とウスリー川を隔ててロシアと接し、南は鴨緑江を境に朝鮮半島、西には大山脈の向こうにモンゴルという場所にあった。

満州国地図
(Wikipediaより)

この地に文化系最高学府として「建国大学」が設立されたのは1938年。民族協和を建学の精神とし日本人・朝鮮人・中国人・モンゴル人・白系ロシア人の優秀な学生を集めて共同生活をし、将来の満州国の指導者となるべき人材の育成を目指した。授業料・生活費すべては官費で賄われるという条件から、創立時150名の募集に対し、2万人の志願者があった。だが1945年、終戦によって満州国が瓦解し、この大学も消滅したのだ。

新聞記者である三浦英之が建国大学の名前を聞いたのは2010年のこと。敗戦後、ソ連軍の捕虜になり中央アジアで強制労働をさせられたという男性の向学心がとても強いことに驚嘆したのだ。85歳になった今でもロシア語の勉強を続けるのは、いつまた来るかもしれないロシアとの軋轢を警戒してのことだという。そしてこう明かしたのだ。

「私はこれでも建大生の端くれですから」
 
その後「幻の大学」と呼ばれる建国大学について少しずつ調べ始めたが、資料がほとんど存在していないことを知る。
 
たまたまその年に、最後の同窓会が東京で行われた。三浦はその場に赴き、出席者の姿をカメラに収める。彼らは間違いなくスーパーエリートであった。合格率1%に満たない超難関を越え、満州国が国是とした「五族協和」を目指した若者だったのだ。
 
しかしその後の過酷な運命は国により、立場により全く違ったものとなる。その足跡を求め、生き残っている建大生の力を借りて、三浦は、日本国内はもとより、中国、韓国、モンゴル、台湾、カザフスタンへインタビューの旅に出る。それは、何者かが三浦に課した使命のようにも思えた。

あの戦争に触れることができない人々がいまでもいる、そのことに驚かされる。彼らが人生最後に語りたいということを、しっかりと受け止めたいと強く思う作品であった。
(小説すばる 2016/2月号)

豊竹嶋大夫引退興行 194回文楽公演

Posted by erkazm on 16.2016 伝統芸能・落語 0 trackback
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昨年人間国宝となられた豊竹嶋大夫師が引退する本公演。2月14日に通しで観てきました。

1部の「信州川中島合戦」は平成8年以来の公演で、初めてみましたが近松門左衛門の作品らしく人を引き付ける工夫が随所になされています。“妻がどもりで夫が片輪”と現代の舞台ではなかなかかけにくい二人が主人公。太夫の「どもり」の語りが印象的です。

3部の「義経千本桜」は何度見てもいいですね。今回は中納言知盛を桐竹勘十郎さんが初役で遣いました。玉男さんで観ることが多かったので、その違いも面白かった。玉男さんは船頭としての男っぷりがいいですし、勘十郎さんのは、武士なのにどこか公家っぽい感じがするのです。

お目当ての2部、は千秋楽まで満員だそうです。引退興行は口上から始まりました。呂勢大夫の口跡鮮やかな口上は見事です。演目は「関取千両幟」。猪名川を英大夫、鉄ケ嶽を津國大夫。おとわを嶋大夫が語ります。人形を遣うのはおとわに簑助さん。一門揃ってのこのお芝居はすばらしかった。腰を浮かせて熱演する嶋大夫を観るのはこれが最後かと思うと、胸が熱くなります。

私が最初に好きになりサインをいただいたのが嶋大夫さんでした。小さい身体のどこから出るのかと思うほどの大音声。床の下で舞台を観た時には、汗が降ってきたこともありました。

今回の舞台で、簑助さんの女形がいかにすごいのか、改めて感激しました。足元が危ないほどなのに、すべてが艶めかしく慎ましやかなのです。

終了後、拍手が鳴りやまず、会場全ての人が引退を惜しんでいました。ロビーには各方面からの蘭の花がたくさん。
嶋大夫蘭

国立劇場は、いま梅が満開。馥郁としたいい香りが漂っていました。
国立梅


『「全世界史」講義」ⅠⅡ 1万冊読破の教養人による興奮の知的エンタメ!

Posted by erkazm on 10.2016 新刊書評 0 trackback
「全世界史」講義 I古代・中世編: 教養に効く!人類5000年史

「全世界史」講義 II近世・近現代編:教養に効く! 人類5000年史


なぜ「人類5000年史」なのか。理由は20万年に及ぶ人類の歴史の中で、文字資料が残っているのが5500―5000年前からだからだという。本書は絵や考古学的遺品から類推するのではなく、人間が生きて考えた証拠である文字を基本に歴史を組み立てていく。
 
著者はライフネット生命保険株式会社の会長兼CEO。京都大学で歴史の講座を受け持ったこともあるほどの知識人である。読書家としても有名だ。彼が読んだ1万冊以上の本から、事実と思われることを組み合わせ、5000年を一筆書きのように書き上げたのが本書である。Ⅰ・Ⅱの2冊に分けられ、5部構成となっている。Ⅰは古代と中世、近世以降がⅡとなる。

興味深いのはⅠだ。文字の誕生から始まり、さまざまな人の営みの「初めて」を辿っていく。学生時代に習った四大文明はそれぞれ個別に発生したように思っていたが、実は密接な繋がりがあり、時間とともに広がったことが証明されていく。

なぜ戦争というものが起こったのか、なぜ宗教が必要となったのか、なぜ国という概念ができたのか。さまざまな文献に記された事実を組み合わせ、大きな事件が鮮やかに解読されていく。

気候が温暖で、十分に食べるものがあり暮らしやすい時期には、人は争いを起こさないものだ。反対に寒さや暑さによって土地から逃げ出せば、玉突きのように次の土地の人間を追い出すか、あるいは闘わなくては生き延びられない。人もまた自然に生かされているのだ。

Ⅱは西暦1400年以降を細かく読み解いていく。年号を覚えるだけの味気ない教科だった世界史が、こんなにもダイナミックな因果律でできていたのかと感動すら覚える。

「歴史は苦手だ」と尻込みする前に、最初の10ページだけでも読んでほしい。本書はあなたの知的好奇心を大いに刺激するだろう。

(週刊新潮 2月11日号)

ひとみ座『乙女文楽』荒川公演 迫力に総毛立つ!

Posted by erkazm on 09.2016 伝統芸能・落語 0 trackback
乙女文楽 荒川公演 A4表-thumb

文楽好きが高じて、さまざまな人形芝居が気になっている。
乙女文楽は「ひょっこりひょうたん島」でお馴染みのひとみ座が継承しているひとり遣いの文楽。
太夫と三味線は女義太夫のプロたちだ。

実は何回か観ているのだが、今回の公演は迫力が違っていた。
『二人三番叟』は客席に降りて観客の五穀豊穣や幸せを祈りながら踊る。
間に乙女文楽の歴史と遣い方のレクチャーが入り、後半は『増補大江山酒呑童子』。

太夫は鬼女を竹本土佐子、渡辺綱を竹本越考。三味線は鶴澤寛也、鶴澤津賀花。
全身をつかって遣う人形のダイナミックな動きに満席近い観客は息を飲んで見つめている。

終演後はロビーでお人形たちがお見送り。
大満足のお芝居でした。

『ポンコツズイ 都立駒込病院 血液内科病棟の4年間』 二度の臨死からの生還、おめでとう!

Posted by erkazm on 06.2016 HONZ 0 trackback
ポンコツズイ 都立駒込病院 血液内科病棟の4年間

「好事魔多し」とはよく言ったものだ。

もろもろの多難を乗り越え、ようやく安定が見えてきたころ、ドカンと足元に大きな穴が開く。人生にはよくあることだと言われるかもしれない。

でも、あとからよく考えてみると、その穴は突然できたわけじゃなく、少しずつ広げられていったものなのだ。多忙な期間は、見たくないから知りたくないから、いろいろな理由を付けて良い方に解釈してきた。そのツケがまわってくるのが、一息つけるようになった時なんだろう。

矢作理絵、33歳。アパレル業界のフリーインポーターだった2011年は、多忙を極めていた。東日本大震災で日本のファッションイベントがすべて中止になる中、日本のものづくりを紹介するため、ベルリン、ニューヨークと飛び回っていた。

ただ、徐々に体が不調になっていくのは感じていたのだ。熱っぽいから風邪か?ちょっとぶつけると痣になるのは何?大量の鼻血、止まらない生理、貧血の連続。気にはなるけど仕事が先。だがどうにも頭から離れなくなって、近所のクリニックに駆け込んだ。

血液検査の結果、ただならぬ雰囲気。聞けば治療に当たってくれた医師は血液専攻で、すぐに大病院に行けという。駒込病院を紹介してもらって直行すると血液の病気であることは間違いなく、即入院だと告げられる。

結論から言えば、彼女の病気は「特発性再生不良性貧血」であった。100万人に5人の確率で厚労省指定の血液難病だ。
不幸中の幸いだったのは両親が元気で、彼女に尽くしてくれたことだ。ただ父親がかなり素っ頓狂な人で、これはこれで重くなりがちな本書の笑いのツボになって、読者にとってはありがたかったのだが……。

さて、多少具合が悪いとはいえ昨日まで元気に働いていた人が、医師も驚くほど重症だとは本人も思えなかったのだろう。最初はあくまでもお気楽である。同室の人との会話も長閑だ。ただこの温かい時間も一瞬のこと。診断が下るまでの検査だけでアレルギー反応に苦しめられ、息苦しさに苛まれていく。

幸いにもガンのような悪性疾患ではなかったが、状態はステージ5の最重症で、治療方法の第1オプションは骨髄移植。それも兄弟で型が一致していれば一番いいという。だがたった一人の兄に拒まれ、第三者からの提供を受けることになった。

2番目の方法としてATG療法が選択された。これは免疫抑制療法で、ウサギから作られた抗体を注入され「ウサギ証明書」が発行される。敗血症を予防するため虫歯の治療までしたが効果は上がらず、骨髄提供者を待つことになった。幸い、すぐに見つかり手術への段取りとなる。

骨髄移植をした患者の病気との闘いは『セカチュー』やらテレビドラマやらで想像がつくだろう。骨髄を注入された後、感染しないようにビニールのテントの中で生着するのを待つ。その間で命を落とす人もいる。しかし矢作さんの大変さはその比ではなかった。
「確率数パーセント」の障害が怒涛のように押し寄せてくる。医師でさえ見たことのない症状に、対症療法で切り抜ける。臨死と言ってもいいような状態に2度陥り、一度は親戚友人一同を呼び、一度は医師から「あと二日」の余命宣告まで出されてしまうのだ。まるでおみくじの大凶を10回続けて引いたようなものだ。

だが、最後のおみくじが大吉だった。だからこそこの本が書けたのだけど、その瞬間、読んでいた私ですらガッツポーズをつくってしまうほど、それは奇跡の復活だったのだ。

闘病記は読むのが辛い。なのに読まずにはいられないのはなぜだろう。いつか自分に降りかかってくる「大病」に身構えるため?同じ病気の人に体験を知ってもらうため?どちらも当たりだが、私の場合は「人間の強さ」を確認したいからだと思う。
もちろん患者本人の強さは当然だが、家族や友人たちの支え、医師や看護師たちの働き、医学の進歩など、この本からたくさんの知識を得た。これはいつか私の役に立つ。

矢作さんは命を取り留めた。だが、タイトルどおりポンコツの骨髄を宥めながら過ごしている。よくがんばったね。そして、よくこの本を書いてくれました。ありがとう。
  

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