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『ホーダー』 捨てられないは病気かもしれない

Posted by erkazm on 06.2012 HONZ 0 comments 0 trackback

ホーダー 捨てられない・片づけられない病ホーダー 捨てられない・片づけられない病
(2012/01/30)
ランディ・O・フロスト、ゲイル・スティケティー 他

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最初にお断りしておく。このレビューを読んで多くの人が「自分のことか?」と怯えるだろう。まだ見世物的に報じられる日本のゴミ屋敷だが、「強迫性貯蔵症」(ホーディング)の実態は明らかにされていない。自分ひとりで悩んでいる人も多いかもしれない。事実、自分に置き換えると、少々悩ましいことでもある。

仕事柄、身の回りに本を置くことは多い。しかしふと気が付くと、仕事場のパソコンまわりに大量の本が積み上がっている。ざっと数えても百冊近くある。年末の大掃除でだいぶ古本屋に持っていたのだが、いつの間にこんなに増えてしまうのだろう。毎日の習慣で、朝刊の広告で新刊をチェックし、買い物に出るときに書店で手に入れる。そんなことが続いているのだから当たり前といえば当たり前のことだ。

世間で“シンプルライフ”や“断捨離”が持てはやされるのと対照的に「ゴミ屋敷」や「汚部屋」が問題視されている。なんでもかんでも溜め込み、人の出入りさえ不自由になった挙句、衛生問題や悪臭などで自治体などから強制撤去されるニュースを見ると、いったいどんな精神状態の人だろう、と不思議に思っていた。
 
アメリカではこういう人たちを「ホーダー」と呼ぶ。極度のガラクタ収集癖をホーディングといい、彼らは自分の家をゴミで埋め尽くしてしまう。他人から見ればガラクタやゴミだが、当人にとってはとても大切なものであると主張し続け処分を拒否するため、時によっては強制排除となる。

本書はホーダーを専門に研究する学者による精神構造の研究書である。強迫性障害やADHD、極端な完ぺき主義など原因はさまざま考えられているが、決定的なことはまだわかっていない。この本では典型的な例をあげ、彼らがどうしてホーダーになってしまったのか、そして彼らを治療することできるのか、そして家族がホーダーである場合の対処などを主に取り上げている。

ゴミ屋敷の住人は、外の人とのコンタクトが取り辛いのではないか、と思われがちだが、実際には社交的で頭の回転が速く、職場ではきちんと仕事が出来る人が多い。モノに対しての執着は強く、捨てるという行為を「もったいない」とか「かわいそう」と捕らえ罪悪感に苛まれてしまう。何もかもが大切なモノで、ドアも開けられないくらいに積み上げているのに、どこに何があるかきちんとわかっていると思っている。

モノを溜め込むといっても、多くの場合、生命に危険を及ぼすほどのことはないし、貯蔵が可能な広さの家があれば、外部の人間が問題にするようなことではない。しかしホーダーの多くには、溜め込み捨てられないという行為を恥じ、気分が落ちこみ積極的になれないといった深刻な影響が出てくる。自分ひとりなら、ゴミだらけの中でも何も感じないのに、ひとたび他の人の目に触れることになると、猛烈な劣等感に苛まれる。強引に侵入すると、モノに詰め込まれた室内には、人一人がようやく通れる通称「ヤギ道」ができている。日本語に直せばたぶん「けもの道」だ。


中村うさぎさんの部屋は有名だ。

モノだけではない。人によっては動物を抱え込むこともある。家の中に何十匹もの捨てられた猫や犬を飼い、自分の行動の正当化を声高に主張する者もホーダーの類だ。
 
子供の頃からこの奇癖があると、これは立派な精神疾患である。本書の中に大富豪の双子の兄弟が紹介されている。ふたりとも天才と呼ばれながら、ホーディングが止められない。祖母や母もホーダーだった。彼らは極めて高価なものばかりを、それぞれが借りているホテルのペントハウスに集め、入りきらなくなると、そこはそのままに違う部屋を借りることを繰り返している。集めたものへの執着は激しく、水漏れや暖房の修理でさえ絶対に入れさせない。

また、老齢化してからガラクタを溜め込みだすことをシロゴマニアといい、自分の世話を一切せず、極端に不衛生な状況で暮らす指標にもなっている。確かに老人たちはモノを捨てたがらない。いつか使うかも、とかまだ使えるから、と押入れの奥はワンダーランドになっている。家族が処分しようとすれば烈火のごとく怒るため、放置するほかはない。

さて治療についてだが、本書ではセラピーでは解決できない場合、ホーダーに特化した治療プログラムの開発に至った。巻末にはアメリカにおける対処法も列挙されている。実際、先に紹介した富豪の双子ホーダーに著者のフロスト教授が付きっ切りでホーディング行動を抑制し、捨てるという行動をさせた。するといくらかの改善が見られたが、達成させるのには膨大は時間が必要だと感じた。

隠れた病癖である「ホーダー」は、今のところ日本ではまだ馴染みがない。しかし確実に存在しているだろう。モノに支配される世界からどう脱却するか。ひそかに苦しんでいる人たちにとって、本書は福音となるかもしれない。
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消費伝染病「アフルエンザ」―なぜそんなに「物」を買うのか消費伝染病「アフルエンザ」―なぜそんなに「物」を買うのか
(2004/11)
ジョン・デ グラーフ、トーマス・H. ネイラー 他

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本書でも紹介されている、ホーディングのきっかけにもなっているかもしれない「物を買う」という病気について。最近日本でも増えている貸し倉庫を借りなければならない人は、ホーダー一歩手前なのかもしれない。


だらしない人ほどうまくいくだらしない人ほどうまくいく
(2007/09)
エリック エイブラハムソン、デイヴィッド・H. フリードマン 他

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いやいや、適度な乱雑さは創造の源である、と主張する一冊。『ホーダー』の著者もある程度は賛成している。しかし生活の質がどこで損なわれるかの境界線を特定するのは難しい。編集者の机の上を見ると、そのあたり、ひしひしと感じる。


あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)
(2009/11/10)
肥沼 位昌

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撤去のためにかかる費用は膨大である。地方自治体では頭の痛い問題だろう。


片づけられない女たち片づけられない女たち
(2000/05/01)
サリ ソルデン

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多分、片づけられないことを病気であるとした最初の本。衝撃的だった。
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