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『阿蘭陀が通る』

Posted by erkazm on 26.2011 HONZ 0 comments 0 trackback

阿蘭陀が通る―人間交流の江戸美術史阿蘭陀が通る―人間交流の江戸美術史
(2011/08/25)
タイモン スクリーチ

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HONZ代表成毛眞の著書に『本は10冊同時に読め』がある。私も10冊まではいかないが平行読書をする。小説は一気に読んでしまうが、学術書や研究書、美術書などは時間をかけて読む。今回はあまりの面白さに、1ヶ月かけて読み終えた本を紹介する。

鎖国していた江戸時代、海外との交流は中国を除けば長崎の出島のオランダ人だけだったと日本史で教えられてきた。向学心に燃える日本人医師たちは蘭学を学ぶために長崎を詣でていたが、滞在していたオランダ人たちは出島に閉じ込められ、まさに籠の鳥であった。しかし物の流通は頻繁にあり、絵画や建物は日本文化に影響を及ぼし、舶来の時計や標本は好事家の大名たちに高額で取引されていたのだ。

『阿蘭陀が通る』は注目のジャパノロジスト、タイモン・スクリーチが長崎に滞在していた外国人と日本人との交流に焦点を絞った美術史である。文章の説明だけではよくわからない「絵画の様式」や「作図方法」なども豊富な図版を使って丁寧に説明されている。本文204ページの中に図版が130点あまりも掲載されていると聞けば、興味を持つ人も増えるかもしれない。

1641年から1859年まで200年以上にわたって東インド会社オランダ商館があった長崎の出島だが、滞在する外国人は基本的にそこ以外に出ることは許されず、日本人も公用以外で関わることは禁じられていた。しかし、そこはそれ、いろいろな手口もあったようで、少しずつ規則は綻びていく。

出島にはカピタンとよばれる商館長、阿蘭陀外科と呼ばれる医師、そして書記をはじめとした外国人が閉じ込められていた。しかし年に一度、その三人に通詞が付き従い、約100人もの日本人に随行されて江戸参府を行った。医師は当時の知識人として優遇されていた。外科というより万能であると思われていたのだ。第一部「御城」のパースペクティヴには参府の折に交わされた品物の数々や医師というより科学者であった阿蘭陀外科の知識を吸収しようとする人々の姿が描かれている。

本当にあったかはわからないが、当時の名所図会にはオランダ人が描かれることが少なくなかった。「外人も見る美しい景色」「外国人が立ち寄る美味しい豆腐屋」などの絵が売りに出されている。いつも出島に閉じ込められていた阿蘭陀人たちにとっても参府は楽しい催しだったに違いない。
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オランダ人と一括りに呼んでいるが、出島の商館は東インド会社という多国籍企業のものである。当然のことながら滞在していた外国人はオランダ人ばかりではなかった。元禄時代に医師として徳川綱吉にも謁見し『日本誌』を著したことで有名なケンペルはドイツ人だし、日本の植物学の基礎を作った医師、カール・ツンベルグはスウェーデン人である。召使にはインドネシア人をたくさん連れ、彼らはマレー語を良く話したという。

商売としてはうまみがあったかもしれないが、彼らが、極東の地に来ることはかなりの覚悟がいっただろう。実際、彼らが死ぬと日本側は埋葬させず、海に捨てていたという。話をするのは通詞と遊女のみ。だから本国で戦争が起こり、荷を積んだ船が来ないと、彼らも出島も困窮した。

本書のページを大きく裂いている日本人は、画家として有名な「司馬江漢」と梅毒の治療法を学んだ通詞「吉雄幸作」。阿蘭陀側では先ほど紹介したツンベルグと日本語が達者であったというカピタンのイサーク・ティッツイングである。彼らは制限されたなかで、なんとか交流を取ろうとし、日本文化と政治に幾ばくかの影響を与えたのだ。ツンベルグが持ち込んだという薬水に付けた瓶詰めの生き物は評判となり、平賀源内の著書にも写生が描かれている。

鎖国の中で外に向かってわずかに開いていた長崎。そこに閉じ込められていた阿蘭陀人と数少ない日本人の交流の記録は、意外にも人間臭いものであった。

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今日のエントリーはかなりマニアックでした。
興味を持った方はこちらもオススメです。



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