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『死にたい老人』

Posted by erkazm on 16.2011 HONZ 0 comments 0 trackback

死にたい老人 (幻冬舎新書)死にたい老人 (幻冬舎新書)
(2011/09/29)
木谷 恭介

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日曜日の朝っぱらから、なんて本を紹介するんだ!とお叱りを覚悟でこのレビューを書いている。

しかし、タイトルがいいのだ。思わず手に取りたくなる。発売半月で、すでにベストセラーの仲間入りを果たしたことは、著者にとってうれしいのかどうか、そのあたりを聞いてみたい気がする。

作家・木谷恭介の名前を聞いたことがある、という人は多いだろう。20年以上前になるのだろうか、ノベルスが隆盛を極めた時期があった。ご当地小説などとも呼ばれ、西村京太郎、山村美紗、内田康夫などに連なって、この木谷恭介の宮之原警部ものも人気があった。現在でも書き継がれているシリーズは作品紹介サイト「宮之原警部オッカケタイ」によると103巻(最新刊の情報でもよくわからないのだけど)にまでなっているらしい。83歳という年齢から考えても、旺盛な執筆量だといえるだろう。

しかしこの木谷先生、4年前に断食安楽死を決意する。78歳で妻に逃げられ、先行きは不安。期待していた民主党への落胆も重なる。自死をしたい理由は様々あるが、直接の最後の引き鉄になったのは「女性とセックスできなくなった」こと。82歳2ヶ月での出来事であった。女性とボディトークができなくなったことで、最後の支えをなくしたという。

断食の試みは3度に渡る。最初は準備段階で心不全となり病院に運ばれ断念。ただ死ねばいいというわけではないので、多少は周りに知らせているが、心配なのはその人たちが保護責任者遺棄にあたらないかということだ。

実にたくさんの本を読み入念な準備を重ねていく。2度目、3度目の経過の詳しい日記が本書のメインになる。結局は失敗して今に至るわけだが、その間の経過は壮絶。51キロあった体重は42キロまで減った。

何よりこだわったのは、健康で死ぬこと。胃潰瘍で出血したり、心不全で死んだりすることは耐えられない。そのために持病の薬だけは確実に飲む。飲むったら飲む。

この間、東日本大震災が起こった。自分は極楽のような環境で死ぬことを希望しつつ、被災者は死の予感さえない中で命を落としたことに慙愧を覚える。原発の人災と自らの戦争体験を重ね合わせる。小説より筆鋒が鋭い空腹のためか。神経が研ぎ澄まされ、理路整然と書かれていることが、だんだん可笑しくなってくる。

作家が晩年に自殺を企てるのは珍しいことではない。川端康成や江藤淳の例もあるし、一昨年、遺書を残して失踪した多島斗志之は未だに見つかっていない。このような失敗記というのは初めてではないだろうか。この悪あがきとも思える行為を身近なものと感じるか、情けないと思うかは読んだ人の年齢や状況にもよるだろう。しかし安楽死の問題を含めて生き死の自由については、社会のなかできちんと考えていい時期なのかもしれない。

本書で紹介されている本は「HONZ」に紹介した。
それ以外で思いついた本を何冊か紹介する。


そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)
(2010/07/28)
城山 三郎

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作家の絶筆としては、いまのところこれに勝る本はない。


井伏鱒二自選全集 (第1巻)井伏鱒二自選全集 (第1巻)
(1985/10)
井伏 鱒二

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あの『山椒魚』の最後をばっさり切ってしまったことで、大論争となった。自作をどうしようと作家の勝手だが、当時はびっくりした。


父・丹羽文雄 介護の日々 (中公文庫)父・丹羽文雄 介護の日々 (中公文庫)
(1999/09)
本田 桂子

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101歳まで生きた作家の晩年。いろいろ考えさせられたなあ。
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