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「本のキュレーター勉強会」4月の課題図書。   朽木ゆり子『ハウス・オブ・ヤマナカ』(新潮社)

Posted by erkazm on 06.2011 本のキュレーター 0 comments 1 trackback
ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商
(2011/03)
朽木 ゆり子

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どこの国でもいい、日本と日本人のイメージは?と尋ねると、フジヤマ・ゲイシャ・サムライ・ウタマロなどの単語が間違いなく出てくるだろう。今回の震災でそこに「フクシマ」が加わったのはとても残念なことだが、エキゾチックな魅力のある国、と思われているのは間違いない。その発端は、黒船来航から開国後、たくさんのお雇い外国人が日本の魅力を海外に伝えたことと、ほかには例をみない美術品に、海外のコレクターが飛びついたせいでもある。
 
『ハウス・オブ・ヤマナカ 東洋の至宝を欧米に売った美術商』は欧米の富豪たちが好んだ美術品を集め売った山中商会という美術商の興亡記である。著者の朽木ゆり子は『フェルメール全点踏破の旅』で世間の注目を浴びた元日本版エスクァイアの副編。2000年に新聞に紹介されていた大阪山中商会の山中定次郎とロックフェラーやフリーアとの交流に、彼女が興味をそそられ調査が始められたのだ。

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)
(2006/09/15)
朽木 ゆり子

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口絵に紹介されている、ニューヨークのメトロポリタン美術館にある六曲一双の屏風は、山中商会が仲介し美術館に収められるまで、紆余曲折の物語を紹介し、日本美術ばかりでなく中国からも絵画や陶器、仏像の頭などを大量に販売していたことを突き止める。ニューヨーク五番街をはじめ、ロンドンやシカゴ、北京にまで支店を持ち、コレクターばかりか各美術館にまで影響力を持ちながら、太平洋戦争で全財産をアメリカに没収された山中商会の全貌は、歴史の影に隠れ今まで見えてこなかった。
 
しかし朽木は、買ったほうの資料を求めて東奔西走し、山中商会の得意先がどこで、どんなものを売ったのか、どういうものを探したのかを掘り起こす。それは領収書であったり、書簡類であったり、売買用のカタログであったりする。最後にたどり着いた膨大な資料は、戦争直後、接収されたのちの「敵国資産管理局」による年次報告書であった。それも手っ取り早く、デパートなどを利用するのではなく、美術商たちの手腕を生かした独特の方法をとったのだ。
 
骨董屋といえば、買い手からは安く、売り手には出来るだけ高く買わせるのが腕の見せ所である。普通、仕入れ値は表に出ないものだが、アメリカの資産管理のためには仕入れ値も記入しなければならず、どれだけの利益を上げられたのか明らかにされている。また、今ほど鑑定が煩くない時代だけに、間違いとは言い切れないが、正確ではない鑑定によるものも多いようだ。しかし、東洋趣味の欧米人にとって、山中商会はじめ日本の美術商は、彼らのコレクター欲を満足させるために、無くてはならないものだった。山中商会の記録は、日本だけでなく中国・韓国を含めた美術品の流れを追う非常に重要な資料なのだ。

『ハウス・オブ・ヤマナカ』をもっと楽しむために 
実際、日本のどういう美術品が興味を持たれ、どこから売りに出されたのか、関連本を紹介する。

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
(2005/09)
渡辺 京二

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明治維新、開国された日本に来た多くの外国人は、礼儀正しく清潔で簡素な中にも美しさを秘めた日本人に魅了された。それが浮世絵や根付などに代表される美術品のコレクションにも繋がっていく。

このことは渡辺京二『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)に詳しい。外国人たちが目にした日本人の美徳は驚愕に値するものだったようだ。

家宝の行方―美術品が語る名家の明治・大正・昭和家宝の行方―美術品が語る名家の明治・大正・昭和
(2004/10)
小田部 雄次

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しかし、開国によって武士は失職し、徐々に近代化していく中で没落する大名や貴族、商人たちは、泣く泣く家宝を手放していく。

いくつかの資料を基に書かれたその過程は『家宝の行方』(小学館)という佳作のノンフィクションとして2004年に著されている。著者は近現代史学者の小田部雄次で、『ハウス・オブ・ヤマナカ』でも何度も登場するボストン美術館や美術史家のフィッシャーなどに売り渡した過程に山中商会も深く関係していたに違いない。生き延びるために先祖の残した宝を売らなければ生きていけなかった名家の思いはどれほどのものであっただろう。

魔境アジアお宝探索記――骨董ハンター命がけの買い付け旅 (講談社+α文庫)魔境アジアお宝探索記――骨董ハンター命がけの買い付け旅 (講談社+α文庫)
(2007/02/21)
島津 法樹

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そしてもうひとつの謎は、一帯どこから仕入れたのかわからない品物のことだ。屏風や浮世絵、大名道具など出自のわかるものはともかく、中国美術などはどういうルートを取られたのか判らない場合が多い。

その謎の一端を解き明かしてくれそうなのが島津法樹『魔境アジアお宝探索記』(講談社+α文庫)である。著者は現役の美術商。東南アジアをはじめ、韓国・中国から古い陶器や磁器を買い集めている。その丁々発止のやり取りが凄いのだ。買うのはだましてでも安く買い、その値打ちを見極める。ときには命がけで戦闘地域へも出かけていく。多分、山中商会に商品を流していた人々は、こういう危険を冒していたのだろう。冒険ノンフィクションとしても傑作である。
 
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書評を読み比べるべく、トラックバックさせていただきます。 常々、我々は現在からの認識でもって歴史を見てしまい、誤った歴史解釈をしがちである。本書は、日本の美術史に光を ...
2011.05.07 09:19 なおきさんのブログ

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