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『パリの国連で夢を食う。』世界一のお役所で働くということ。

Posted by erkazm on 16.2014 HONZ 0 trackback

パリの国連で夢を食う。パリの国連で夢を食う。
(2014/09/07)
川内有緒

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国連で働く女性職員をといえば、事務所の中ではパリっとしたキャリアスーツを着てパソコンを猛烈に叩き、難民キャンプや食料調査、医療現場では髪をひっつめにして笑顔で支援にあたる、という絵が思い浮かぶ。キャリアウーマンの頂点、超エリートだと思っていた国連職員。しかし真実の姿はちょっと違っているようだ。

著者の川内有緒は日本の大学を卒業後、アメリカに留学。その後、東京の大手のシンクタンクでリサーチやコンサルティングを専門にしていた。仕事はやりがいがあったが、あまりの忙しさ転職を考え、ネットで探すと国連職員の募集があった。どうやら自分にも勤まりそうだと応募をしたが、それっきりナシのつぶて。すっかり忘れた2年後に「あなたは書類審査を通りました」の通知が来た。なんとパリに面接に来いという。

そこからは怒涛の展開だ。英語とスペイン語は達者だが、フランス語はからっきし。しかし千載一遇のチャンスを逃すまじ、と臨んだ面接の結果が出たのは、それからさらに半年後。すべてがスローモーションで動いている。

それはどうしてなのか、と尋ねると面接官は厳かにこういった。


「ディス・イズ・ザ・ユナイテッド・ネーションズ(ここは国連なんです)」




国連って何?って改めて聞かれると、実はよく知らないことに気が付いた。1945年、第二次世界大戦後に設立された国際機関だ、くらいの認識はあるけれど、どんな組織か何をやっているのか漠然としかイメージできない。

国連ファミリーと言われる傘下にはユニセフ、世界食糧計画、国際原子力機関(IAEA)などがあり、ニューヨークの国連本部はその元締めとなる。それぞれの国連機関には別個の本部があり、ニューヨークとジュネーブに多い。

国連に加盟する国は分担金が課せられ、それが通常予算となって職員や活動資金にあてられる。日本の分担金はアメリカについで世界2位。この分担金の額によって国ごとの職員の数が決まるのだそうだ。日本は、お金は出しているのに職員の人数が少ない。その上女性となるとさらに有利になる。著者のアリオが正規職員として就職できたのはそういう事情もあった。

国連だから当たり前だが、職場には様々な国の人が集まっている。通常予算で賄われる正規職員の下には、プロジェクトごとに雇われる臨時職員が山ほどいる。彼らは正規職員を目指すが、門は狭く非常に難しい。となれば、様々なプロジェクトにアピールし、臨時採用を繰り返していく。

教育関係の機関に正規で就職したアリオの同僚も国際色豊かだ。ボスはセルビア人。ユーゴ紛争を生き抜いたツワモノである。その上の大ボスはイギリス人の倹約家。アメリカ人の同僚男性は面倒見がよく、フランス人男性はパイプタバコを離さない。一緒に働くインターンの女性はアルジェリア生まれのフランス人。臨時社員ながら年配で博学のアルジェリア人の仕事を手伝うのがアリオの最初のミッションだった。

身分は保証されているが、パリというところは住むのが大変なところらしい。住居探しは困難を極め、家賃も高い。それでもやはり住めば都。自由人たちに交じってアリオは楽しく暮らし始める。さすがは芸術の街。アーティストには寛容で、不法占拠もなんのその。

それにしても国連の資金不足はこんなに深刻だったのか、と驚かされる。予算の配分前には計画は立てられず、出張にも出られないから暇を持て余す。人種や宗教の違いを鑑みて自由度を最優先にしたばっかりに、組織は硬直化し新しい物事を採用するにも膨大な時間とタフなネゴシエーションが必要になる。日本のお役所仕事など可愛いものだ。義務より権利が先に立つ。既得権益は手放さない。見事なぬるま湯状態である。

反対に楽しむことにかけては努力を惜しまない。パリという自由な都市ということもあってか、パーティは毎晩で有給休暇も自由自在。仕事より家族を優先するのは当たり前で、アリオはプロジェクトの途中で帰国し、父親の死に目にも間に合った。

目の回るような忙しい仕事に慣れた日本人なら少々物足りないぐらいの働きだが、それが世界のスタンダード。30代の一番働ける時代に5年半も世界を股にかけて仕事ができたという事実は、とてもうらやましい。

本当なら何十年も勤め上げ、年金をもらって悠々自適な老後をおくるのが、普通の国連職員だろうが、アリオはあるきっかけから退職を決意する。宝くじに当たるくらいの確率でようやく得た職業なのに、もったいないとは思う。反対に「よく決意しなあ」と拍手も送りたい。「やりたいことをやる」と決め、今は日本で作家になった。本書は3作目。前作の『バウルを探して』から注目してるノンフィクション作家である。


バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌
(2013/02/14)
川内 有緒

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バングラディシュに飛び込み、伝説の吟遊詩人「ラロン・フォキル」を追う。彼が作った千以上の“バウルの歌”はどう歌い継がれているのかを追ったノンフィクション。第33回新田次郎文学賞受賞作。
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