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『親を送る』 全ての人に考えてほしい、大切な人を失う日のこと。

Posted by erkazm on 18.2016 掲載記事 0 trackback
親を送る
親を送る
posted with amazlet at 16.01.18
井上 理津子
集英社インターナショナル
売り上げランキング: 47,759


読み始めてすぐに、胸の鼓動が早くなった。これは私の物語だ。
 
7年前の夜9時半過ぎ、ライターの井上理津子に母親から電話がかかってきた。締め切り間際の原稿は佳境に差し掛かかっており、受話器を耳に宛てながらパソコンの検索サイトにいくつかのキーワードを入れてEnterを押す。ひとしきり、健康のことや家族のこと、少し認知症が入ってきた父親のことなど愚痴や世間話につきあい、最後はちょっとした喧嘩で会話を終わらせた。いつまでも元気な母親といつもの会話だ。

ついさっき、私にも母から電話があった。パソコンで調べ物をしている真っ最中だった。受話器を顎で挟み、検索窓にキーワードを打ち込みながら、ふんふんと話を聞く。上の空というわけではないが、親身になって聞き入るわけでもない。

「困ったことがあったら電話してね」と会話を切り上げた、自分と著者が重なった。

 『親を送る』という書名をみたとき、読まねばと直感した。社交的で健康な母と家に籠り物忘れがひどくなった父。そろそろ「介護」という二文字が気になりだし、周りの経験に耳をそばだてる。死までの過程は千差万別だろうが、親を看取る心構えのために、本書はとてもいい手引きとなるだろう。

井上の母もその日までは元気いっぱいだった。だが、不注意で揚げ物の油を頭からかぶり、救急車で運ばれたのが、彼女の最期の日々の始まりだった。幸い火傷は軽く、数日間様子を見るために入院することになり、認知症の父親には黙っていようと義理の姉や子供たちと口裏を合わせていた退院間近、容体が急変する。肺動脈血栓塞栓症。幸い命は取り留めたが意識は戻らず、延命措置が施された。この措置を続けるのか、安らかに逝かせるか。父親にはどう伝えるか。親族が集まり協議する。親族が見守る中、母は静かに息を引き取った。

数日前まで元気いっぱいの母の死に茫然としている暇はない。父をどうするか、また親族会議が開かれる。そこには父親本人の意思は入らない。仕事や住まいの場所を理由に「仕方がない」「そうするしかない」と、どんどん決定されていく。何もわからない父親は付いていけずに爆発する。

本書で何度も繰り返されるのは「あの方法でよかったのか」という後悔の言葉。その時は精一杯でも、あとで思うとくよくよしてしまう。多分、誰もが通る道だろう。4か月のうちに両親を亡くすという慌ただしい経験のドキュメンタリーは本当に身につまされる。
 
12月に入り、喪中はがきが毎日届く。この人たちも今年、つらい別れを経験したのだなあと思う。本書は私の物語であり、あなたの物語でもあるのだ。
                                                             (小説すばる 2016・1月号)


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