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『日本人の値段』 年俸2700万ではまだまだ安い! 中国に買われたエリート技術者たち

Posted by erkazm on 16.2015 HONZ 0 trackback

日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち
(2014/12/17)
谷崎 光

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現在、中国国内で働く日本人技術者はどれくらいいるのだろう。

「2,3000人はいる。数百人などという数字ではない」(女性ヘッドハンター)
「5000人くらい。これ、だいぶ堅い数字だ」(人材会社の中国人経営者)



中国に14年住む著者の耳にも、その数の多さは聞こえてきたが、実際は見当がつかなかった。日本より給料がいいとか、技術を渡せばすぐに首になるんじゃないか、とか噂ばかりが先行していた。

では、取材をしてみようとすると、応じてくれる人を探すのは簡単じゃなかったようだ。しかしひとり見つかると、その後ろには数十人も日本人が働いている。会社によっては数百人にも及ぶ。

技術の範囲も多岐にわたる。中国で一番人気の自動車とその部品製造。材料の鋼鉄、高性能プラスチック、液晶、家電…。ほとんどが軍と結びついた大企業であり、国からの補助が降り、日本人を高額で雇用している。車のエンジニアの場合、年俸2700万円程度が相場で、3600万円ぐらいまではけっこういるそうだ。欧米人はもっと多い。

雇われている技術者の多くはSONY、東芝、日立、三菱自動車、コマツ、パナソニック、シャープなどの超一流企業出身。技術流出が懸念されてから、ずいぶん経つが、彼らは何を思って中国にやってきたのだろう。

まずはドケチの社長で有名な大城自動車(仮称)に勤める田中雄一さん(仮名・50代)を足掛かりに、様子を伺ってみよう。彼はエンジン駆動系の設計開発では、日本のトップエンジニアである。元の会社ではハイブリッド車のトランスミッションの開発チーフであったという。

田中さんは、高額でヘッドハンティングを受けた韓国企業を蹴って、大城自動車を選んだ。

中国でも環境問題に対応する車をやりたい、と。ほら、空気もこんなに悪いし。環境汚染で、国から日本では考えられないような額の補助金が出るらしいです。数十億元(約1000億円)も



子供の頃から機械いじりが好きだった田中さんにとって、この仕事は天職だったのだろう。忙しいことが当たり前、仕事とはそういうもので、やりがいもあった。中国に来てもそれは変わらない。

日本では完成車メーカーの真下にある基幹部品メーカーに在籍していたが、給料は驚くほど安かった。日本が一番強い実力を持つのはそこなのに、だ。だから目ざとい外資に買収される。人兼費を削減のため従業員の残業を減らしたが、それでは仕事は回らないから残業代のいらない管理職の田中さんが昼夜兼行で働いた。その結果、大量の血便を繰り返し、精神的にも追い詰められた。ヘッドハンターの話に乗ったのはそんなときだ。

「技術統監」という役職の田中さんに求められるのは設計開発の指導である。若い部下は自信満々に設計図を持ってくるが、ダメだししてもいうことを聞かないのだそうだ。「私には実績がある!」と主張するが、失敗経験を積まなければエンジニアのレベルは上がらない。機械のエンジニアを育てるのには時間がかかる。日本人エンジニアが優秀なのは、同じ会社に何十年もいて訓練され、技術が継承、蓄積されてきたからである。

中国人の安全意識は低い。低価格を求められるから、低品質になる。金持ちや政府高官は中国の純国産車には乗らないという。国家領導(リンダオ・国家リーダーのこと)の車も、式典の時は紅旗(ホンチー・国産高級車の名前)に乗るが、エンジンとトランスミッションは日本製だそうだ。

田中さんには転職の引き合いがひっきりなしにあるという。より高給となり、生活面の保証もあつくなる。自分の値段が「適正な市場価格」に調整されていくのが中国社会である。

お金ではなく、評価でもない。田中さんの希望は好きなメンバーと新しいプロジョクトを起すことだ。今はバラバラになってしまったが、彼が望むメンバーならどんな困難も乗り越えられるというのだ。

エンジニアとしてのやりがいと好奇心、多少の報酬を求めて、日本からやってきた人たちが嫌気を催すのは中国人の不誠実さなのではないだろうか。外国の特許はパクリ放題、デザインも盗み、設計図には驚くことに基準線がない。それなのに生産ラインに入ると、なぜか製品が出来上がる。材料に何を使うか、どこのメーカーのものかも一切書いていない。試作通りにできたためしはないのに大量生産。その結果、家電製品は爆発する。冷蔵庫も電子レンジもクーラーも電磁プレートもバキュームカーまで爆発する。(参照:中国爆発シリーズ【中国で爆発したもの一覧リスト】チャイナボカン

それでも自分の技術を見込んで、とヘッドハンターがやってくれば、悪い気はしないのが人情だ。実は本書、このヘッドハンティングの章が滅法面白い。日本人の純情と潔癖さが利用され、ハニートラップにもまんまとひっかかる。大企業の経営者も政府の科学技術関係者も見通しが甘すぎる。「技術移転と技術流出は違う」だと!男たちよ、しっかりしなさい。

長く言われていることだが、日本の技術力は世界から狙われているのだ。それは取材した著者が強く感じたこと。谷崎光は名著『中国てなもんや商社』を著し、イヤヨイヤヨといいながら中国に住んで、様々なことに関わり続け体験してきた女性だ。彼女が3年かけて、のべ80人超の取材から見えてきたもの、それは、超優秀なのに報われないため、夢と希望を抱えて流出せざるをえない日本の技術者たちのジレンマであった。
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