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田中徹・難波美帆『閃け!棋士に挑むコンピュータ』 (梧桐書院) 

Posted by erkazm on 23.2011 本のキュレーター 0 comments 0 trackback
2月の課題本はこちら。

閃け!棋士に挑むコンピュータ閃け!棋士に挑むコンピュータ
(2011/02/10)
田中 徹、難波 美帆 他

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以下は、出版社PR誌などに掲載されることを想定した書評です。

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「女性棋士と169台のコンピュータ」

ショートショートの天才・星新一に『神』という作品がある。ある博士がコンピュータに「神の概念」を入力し続けたら、最後には消えてしまうという内容だった。星新一の小説には未来を予言したものが多いが、最近読み返していると、実際に現実化しているような感じがするのだ。コンピュータに何が出来るのか、という疑問ですら、もはや昔とはまったく違ったものになりつつある。

『閃け!棋士に挑むコンピュータ』は2010年秋に、女流棋士・清水市代と将棋用コンピュータ「あから」との対局を軸に、将棋に特化した「人間」VS「コンピュータ」の歴史を丁寧に辿った労作である。表紙の少し悩んだ様子を見せるアンドロイドがセクシーだ。

プロの将棋指しの勝負を見ると、正に「人間コンピュータ」と逆の比喩をしたくなる。幼いころから訓練を受け、奨励会に入ったうえ、その中でも特別な人しかプロになれないことは知っていた。しかし駒の動かし方も知らない朴念仁の私は、正直、どれくらい厳しい世界なのかは大崎善生『聖の青春』『将棋の子』のようなノンフィクションを通して垣間見ていたに過ぎない。

聖の青春 (講談社文庫)聖の青春 (講談社文庫)
(2002/05/07)
大崎 善生

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将棋の子 (講談社文庫)将棋の子 (講談社文庫)
(2003/05/15)
大崎 善生

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そんな超人ともいえる棋士たちが、この勝負に大きな危機感を覚えていたことを知り愕然とした。前世紀末に、チェスではコンピュータに負けたことはニュースを読んで知っていたが、将棋の世界でどのような駆け引きがされていたのか、本書を読んで新しく知ったことばかりである。

世界で最初の将棋ソフトは1975年に完成したという。最初はひどいものだったらしいが、研究者たちの努力により、1990年代半ばからは実力をつけたソフトと人間との対局が盛んになってきたようだ。はじめてプロとの平手の勝負は2007年、竜王・渡辺明と「ボナンザ」というソフトとで行われた。対局禁止をうたった日本将棋連盟だったが、あえて若手のホープを送り込んでの勝負だった。

急速に強くなるコンピュータ将棋ソフトとプロ棋士との戦いは商売になったのだ。人間とコンピュータの戦いは、将棋ファンだけでなく、普通の人をも巻き込んでエンターテイメントとして成立した。20代前半、伸び盛りの渡辺がからくも勝ったこの勝負は、ソフトの開発者、研究者たちをさらに熱くさせる結果となった。

そして「あから2010」が登場する。将棋ソフトの最高峰である4つのソフトが合議しハードウェアは東京大学にある169台のコンピュータを接続した「あから2010」。現在、人間が考えうる、最強の将棋マシンである。
 
本書に描かれる清水市代がいい。女流王将で96年、98年に女流4冠を達成した押しも押されもせぬトッププロである。しかしこの勝負を受けるまでは大きな葛藤があったという。当然だろう、今まであまり興味を持ってこなかったコンピュータとの勝負に名指しされ、迷わなかったわけがない。しかし、その不安を破ったものは、「棋士として一生のうちで、それほどプレッシャーのある対局をさせてもらえる幸せ」だった。

男性と女性の棋士としての違いがここで詳しく説明される。かつて女性棋士は絶対に男性に勝てないと言われてきたが、その大きな要因が「体力」であるのには驚かされた。そういえば、1局が10時間を越えることも少なくない勝負は、世の中にあまりないだろう。
 
駒の動かし方も知らない私だが、やはり第5章の対局シーンは圧巻であった。6時間にわたる勝負の詳細は本書でたっぷり味わって欲しい。
 
頭の重さはおよそ5キロと言われている。その中に詰まった脳で導き出される知識と対応できるのは、169台のマシンと4つのソフトであった。確かにこれからも将棋ソフトは強くなっていくだろう。人間を凌駕する日も近いかもしれない。しかし、人間の対局のようにアドレナリンを想起させるような、感動する局面は作れるのだろうか。本書を読んで、血が通わないと思っていたコンピュータ将棋だが、実際目指さなくてはならないのは、コンピュータが喜びを感じるくらいの勝負なのではないかと思えてきた。次の勝負が楽しみである。
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