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『だれも知らない不思議な病気』にまつわるノンフィクション

Posted by erkazm on 29.2011 ブックガイド 0 comments 0 trackback
だれも知らない不思議な病気―世界59の症例が示す医療の謎だれも知らない不思議な病気―世界59の症例が示す医療の謎
(2011/06)
ナンシー ブッチャー

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昨日の『困っている人』の紹介に続いて、便乗しているようでなんだか申し訳ないようだが『だれも知らない不思議な病気』を取り上げる。

この本では奇病と呼ばれる59の症例を取り上げている。興味本位かもしれない。実際、大野更紗さんのように治療法も確立されていない病に突然見舞われたら、困惑し悲しみ絶望するだろう。しかし、世の中にはこんな病がある、人はこんな症状を呈することがある、と知ることは悪いことだろうか?
 
ノンフィクションの一ジャンルに「闘病もの」がある。昨今ではガンの告知が当たり前になり自分の症状は逐一知らされる、治療法も自分で選べ、メリットもリスクも承知して病に向かい合わなくてはならない。希望も不安もひっくるめた個人の思いが強く伝わってくるものがたくさんある。
 
それとは別に、学術的に分析されたノンフィクションも多い。『だれも知らない不思議な病気』はこちらの立場に立って書かれている。250ページあまりの本で59もの症例が示されているということは、難病奇病のガイドと言ってもいい。半分は旧来の奇妙な治療法や、今後の課題が取り上げられている。


精神の病気については、『稀で特異な精神症候群ないし状態像』が詳しい。
稀で特異な精神症候群ないし状態像稀で特異な精神症候群ないし状態像
(2004/04)
中安 信夫

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それ以外のいくつかの病気については詳しいノンフィクションが出ている。
ここではそれを紹介しよう。

黒死病―ペストの中世史 (INSIDE HISTORIES)黒死病―ペストの中世史 (INSIDE HISTORIES)
(2008/11)
ジョン ケリー

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ジョン・ケリー『黒死病 ペストの中世史』(中央公論新社)は14世紀半ばに内陸アジアのどこかで発生したこの伝染病について、時系列を追って詳細に調査をした迫真のノンフィクションである。

この伝染病、一方はガレー船によってヨーロッパへ運ばれ、一方は陸路で中国に広がったといわれている。未曾有の恐怖に陥った都市の反応と人々の行動や心情が細かく描かれ、非常に興味深い。著者はアメリカの科学ジャーナリストだが、現代の感染症を調べる前に、過去の大流行を調べ始め、ペストに行き当たったと巻頭で延べている。
 
各地に残された公式な記録や書簡、個人日記なども渉猟し、これらから伺える人々の恐怖は現代の我々と全く変わることがない。黒死病の流行によって起こった労働力の不足など様々な事態は、身分の逆転を起こし、貴族達の権威は地に落ちた。終盤に描かれたこの部分こそ、本書の読みどころであると思う。


医学探偵ジョン・スノウ―コレラとブロード・ストリートの井戸の謎医学探偵ジョン・スノウ―コレラとブロード・ストリートの井戸の謎
(2009/07)
サンドラ ヘンペル

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『医学探偵ジョン・スノウ(日本評論社)は19世紀のロンドンで猛威を振るったコレラについて、詳細に調査を行った作品である。ジョン・スノウとは「疫学の父」とよばれるイギリス人麻酔医で、彼の人物史にもなっている。
 
19世紀初頭、ガンジス川流域が発生源とみられるコレラは、それから10年余りでロンドンに到達する。その伝播の経緯は先のペストと同じように克明に調べられている。

最初は空気によって感染すると信じられていたコレラだが、ジョン・スノウの調査によって、必ずしも隣人同士で病気が広がるわけではないということが発見される。そのことより経口感染が疑われ、実地調査と予防活動によって井戸が原因となっていることを解き明かす。この過程はまさに犯人を追うミステリーのような面白さである。

著者のサンドラ・ヘンペルは健康問題などを専門にするイギリス人ジャーナリスト。現代の医学の基礎を築いた偉人の物語である・

火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)
(2003/06)
高山 文彦

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いのちの初夜 (角川文庫)いのちの初夜 (角川文庫)
(1955/09)
北条 民雄

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かつてらい病と呼ばれ、隔離政策をとられた病気である。

日本で一番著名なハンセン病患者といえば、北条民雄だろう。隔離施設から発表された『いのちの初夜』が川端康成に絶賛され、将来を嘱望されながら23歳で散った小説家である。この人生を追った作品が『火花』である。著者の高山文彦は現代を代表するノンフィクション作家。この作品で2000年に大宅荘一ノンフィクション賞を受賞している。

しがまっこ溶けた―詩人桜井哲夫との歳月しがまっこ溶けた―詩人桜井哲夫との歳月
(2002/07)
金 正美

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ハンセン病はいわれなき差別を受けてきた病気だが、親兄弟と離され療養所生活を受けた患者たちは、ようやく人々の理解を得ることができるようになってきた。
本作品はハンセン病の詩人桜井哲夫と在日韓国人金正美との交流の記録である。異形の老人とチョンミとの暖かい関係は、NHKの番組としても放映された。文庫化が望まれる。

狂犬病再侵入―日本国内における感染と発症のシミュレーション狂犬病再侵入―日本国内における感染と発症のシミュレーション
(2008/03)
神山 恒夫

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日本には狂犬病は存在しない。しかし、清浄国はまだ少なく、世界では未だ撲滅されていないのだ。本書は2008年に出版された現段階での最新版。


眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎
(2007/12/12)
ダニエル T.マックス

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狂牛病が騒がれ原因が殺人タンパクのプリオンであると言われる現在、人間でもその殺人タンパクが原因の病気が報告されている。クロイツフェルト・ヤコブ病が一番有名だが、他にも眠れなくなる病気と食人との関係を追った本ノンフィクションは抜群に面白い。


カミング・プレイグ―迫りくる病原体の恐怖〈上〉カミング・プレイグ―迫りくる病原体の恐怖〈上〉
(2000/11)
ローリー ギャレット

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カミング・プレイグ―迫りくる病原体の恐怖〈下〉カミング・プレイグ―迫りくる病原体の恐怖〈下〉
(2000/11)
ローリー ギャレット

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様々な伝染病を総括し、その恐怖を描いて余りある作品といえば『カミング・プレイグ』上下(河出書房新社)が一番かもしれない。

二段組900ページを越す大著で読みやすいとはいえないが、「感染症の辞典」ともいうべき内容は他の追随を許さない。著者のローリー・ギャレットはアメリカの新聞、ニューズデイの科学ジャーナリストである。エイズを中心に感染症に関する多くの優れた記事を書いてきた。

本書はそれをまとめたものである。取り上げた感染症はボリビア出血熱、マールブルグ、ラッサ熱、エボラ、豚インフルエンザ、エイズ、薬物耐性のウィルスや寄生虫などで、病原菌そのものと現代の環境との関連性の記述など、大変参考になるものである。各章の最後に付けられた膨大な参考文献の細かい文字を追っていると、人類と病原菌との果てしない戦いを思い、呆然とするばかりだ。

陳列棚のフリークス陳列棚のフリークス
(1998/09)
ヤン ボンデソン

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遺伝的な奇形や何らかの原因で外形が極端に人と違っていた場合、エレファントマンを例にとるまでもなく昔は見世物として扱われていた。医療ものとして取り上げていいか悩むところだが、こういう本もある。

『陳列棚のフリークス』(青土社)は風変わりなもの、奇怪なもの、そして驚くべきものに題材を得て、内科の現役医師ヤン・ボンデソンが専門的な考察を加えた非常に興味深い本である。

自然発火する人体、体内に大量にシラミが発生する奇病、胎児の異常化、伝説の巨人、有緒人類、双頭の少年とコレクションは手当たり次第。

もっとも面白かったのは最終章のジュリアナ・パストラーナの物語である。19世紀の半ば、メキシコ生まれでインディオの女性がアメリカやヨーロッパで見世物となり大反響をとっていた。風貌はまるで類人猿で、その死後もミイラにして見世物にしていたという。数多く残った写真や記録は驚くべきもので、この女性の悲劇を思うと心が痛いが、著者は彼女の風貌の原因を解き明かしていく。ある遺伝的な障害が、彼女をこのようにしてしまっていたのだ。医学的見地からこのように書かれた本は他に類をみない。

医学の発展とともに、様々な謎は解明されていくだろう。新たな伝染病が発生するかもしれない。その研究書を今後も紹介していこうと思う。

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