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『自衛隊のリアル』日本のリアルを知る一冊

Posted by erkazm on 15.2016 未分類 0 trackback
自衛隊のリアル
自衛隊のリアル
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瀧野 隆浩
河出書房新社
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集団的自衛権の行使を可能にする新安保法案が9月19日の参議院本会議の採決をへて成立した。憲法違反であるという裁判官や法学者たちの意見も蔑ろにされたまま、多くの国民は不安を抱えている。実際の現場に出ていくのは自衛隊である。しかし今まで、現場の自衛官たちの本音を聞く機会は少なかった。

本書は防衛大学校卒の新聞記者が、多くの自衛官やそのOB、家族にまで取材し、本心を探った一冊である。

彼らは法案と自分たちの立場の乖離に危機感を感じ始めている。「殺す/殺される」という戦場に向かうリアルな気持ちは、私たちが想像することのできないものだ。

2004年、イラク復興支援活動のため陸上自衛隊が派遣された。大きくは報道されなかったが、彼らは攻撃を受けていたのだ。死傷者がなかったのは僥倖に過ぎない。

本当の戦闘の際、自衛隊員は撃てるのか。創設から60年で撃たれた弾は一発だけで、それは遭難した登山者の遺体のザイルを狙ったものだ。陸自の一般部隊では実践的な教育も訓練もなされていないという。

1999年の「能登半島沖不審船事件」にはさらに戦慄させられる。北朝鮮の不審船を追跡中、海上自衛隊に「海上警備行動」が史上初めて発令された。不審船を停止させたが、「立ち入り検査」をするにも武器も防弾チョッキもない。腹の周りにマンガ雑誌を括り付け、彼らは命令を待つ。不審船は再度逃走したため大事にはならなかった。
 
本書では数々のこのようなエピソードが紹介される。報道されていない危機がこんなにあったのか。
 
先日の大洪水の際の活躍は記憶に新しい。今後はそこに「戦争の現場」が含まれる。自衛隊は国から派遣されるのだ。使う人間が間違えれば、彼らの活動は批判されてしまうだろう。今回の法案に賛成でも反対でも、自衛隊の直面してきたリアルはきちんと知っておくべきだと思う。
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『ギャングース・ファイル 家のない少年たち』

Posted by erkazm on 04.2016 新刊書評


小さい子どもが虐待を受けたというニュースを見るたびに、胸の奥が痛みどうしようもない気持ちになる。一番可愛そうなのは、当然ながら子どもだけれど、救えなかったことで苦しみ悶える人々もたくさんいるだろう。どうにか生き抜いた子ども達だって、全員幸せになるとは限らない。
 
2008年に上梓された『家のない少女たち』というルポルタージュは衝撃的だった。(2010・10宝島文庫に収録)著者の鈴木大介は実話系の雑誌で犯罪する側の心理を取材するルポライターだ。この本は、虐待や育児放棄、貧困の結末で、路上に彷徨出でた少女たちにスポットを当てている。発展途上の国で、ストリートチルドレンとして生きる子どもの姿は、本や映像でたくさん見てきたが、日本のこの時代に「生きるための売春」をする少女たちがいることは、大きな驚きであった。そしてその逞しさには感動すら覚えた。
 
では、少年たちはどうしているのだろう。その疑問を解消してくれたのが、今回紹介する『家のない少年たち』だ。彼らもまたストリートに出た。小学校すら満足に出られず、施設や親戚をたらい廻しにされ、空腹の為に万引きを繰り返した末、警察に捕まる。少年鑑別所、少年院とお決まりのコースの末、立派な不良が出来上がる。鈴木はそんな犯罪少年たちのその後を追跡取材した。
 
主な登場人物は4人。22歳の須藤龍真は小柄ながら筋肉隆々の青年だ。不良少年のエリートコースから逃げ出し、今では青年実業家である。彼が鑑別所で出会い、後に「兄弟」と言い交わす面々は、15歳で腕から首筋に青々とした和彫りを施した杉田啓介、小学6年で暴走族デビューをし、ゴリラのようなガタイの万田勝、中学生でMDMAの末端売人をしていた斉藤健吾だ。みんな、似たような体験をした仲間だと確信した4人は、三国志の「桃園の誓い」のように人生を一緒に過ごしていこうと話し合う。全員が少年院を出院できたのは2005年のことだった。
 
地元に縛られていては元の木阿弥だと、彼らは「フリーダム」を決め込む。院の中でさんざん考えたビジネスを実行に移し、窃盗や事務所あらしをし、得た品物は知り合った中国人に格安で売りさばく。しかし、それでは生き残れないと龍真は知恵をめぐらしていく。
 
彼ら以外でも「オレオレ詐欺」を筆頭に新手の詐欺の実態や携帯電話や銀行口座を売りさばく裏社会の総合商社のような孤独な青年、田舎者のホストを食い物にする狡賢いやつ、闇の投資話など小説にしたら「リアリティがなさすぎる」と酷評されるだろうと思うほどぶっ飛んだ話が続く。

 犯罪を許すつもりも加害者を擁護するわけでもないが、この壮絶な事実は多くの人に知ってもらい考えていきたいと思う。

『眩(くらら)』巨匠・北斎の娘を陰影ゆたかに描く傑作”

Posted by erkazm on 11.2016 新刊書評 0 trackback
眩

ここ数年、江戸の絵師を描いた傑作小説が続々と生まれている。等伯、若冲、永徳、豊国、暁斎など、筆に命を懸け個性駅な絵を残した人々の一生は、みな魅力的だ。

そしてここにまたひとり、伝説の女絵師を描いた作品が登場した。名はお栄、画号は応為。父はあの葛飾北斎である。幼い頃より膝に抱けれて絵筆を持ち、父親の工房で働いてきた。

家事一般はすべて苦手で、嫁いだ先でも夫の面倒を見るより、まず絵を描く。もちろん早々に夫婦別れをしてしまう。

その後は北斎が九十歳で大往生するまで右腕として尽くしていく。気ままな親父を慕い、その背を追いかけ、もっと上手くなりたい、もっと違う絵が書きたいと悶え苦しむさまは、女も男も関係なく、物を創造する人々すべてが味わう苦しみなのかもしれない。
 
煩悶の末、書きあがった絵を思わぬ人から褒められると、ふっと報われた気持ちになる。それを支えに高みを目指す。出来ばえに満足することなど決してない。
 
文政年間、絵師にしても戯作者にしても、きら星のような天才が現れた。曲亭馬琴、為永春水、安藤広重、柳亭種彦。

そして渓斎英泉。女たらしの浮世絵師であり戯作者であるこの男が、絵師としても女としてもお栄を磨きあげていく。
 
浮世絵の制作過程も興味深い。北斎のような大物は下絵を書いて、あとは弟子たちが彩色し、彫師が版木に彫り、摺師が紙に重ね刷りする。ぴーんと張りつめた作業を、著者は息を詰めるように描いていく。読者もまた息を止めて出来上がりまでを目で追っていくのだ。
 
時代は幕末近く、応為の絵は西洋画の技法として遠近法や影と光をとりいれて、傑作「吉原格子之図」を完成させる。(カバーの装丁はこの絵を使っている)。

一昨年、太田記念美術館で行われた展覧会で、私はこの絵を見た。花魁たちを照らす煌々とした光を食い入るように見つめる男たちのシルエット。『眩』は「江戸のレンブラント」と呼ばれる応為の生涯を陰影くっきりと浮かび上がらせた傑作である。
(週刊現代 4/9号 ブックレビュー)

『ジェンダー・マリアージュュ 〜全米を揺るがした同性婚裁判〜』愛する人と結婚したい!

Posted by erkazm on 25.2016 映画 0 trackback


同性の結婚が認められてたカリフォルニア州で、2008年同性の結婚を禁止する「提案8号」が通過した。しかしどうしても結婚し、みんなと同じ権利を持ちたいと立ち上がった人たちがいた。

この映画は夫婦同然に暮らす同性カップル二組と、彼らを支援する弁護士や支援団体との5年にもわたる法廷抗争を、詳細に辿ったドキュメンタリーである。愛する人と法的にも同等に結ばれたいと思うのは自然なこと。しかし、それを阻害しようとする人のいかに多いことか。

彼らの家族たちも応援している。子を大事にしたい親たちや、お互いが生んだ子を連れ子にしている女性カップルが微笑ましい。4人の息子たちも彼女たちの戦いを後押しする。

興味深いのは代理人となる二人の弁護士。彼らはブッシュとゴアの大統領選ときに、敵とみかたに分かれた共和党と民主党支援の老獪な弁護士なのだ、。しかしその戦いを忘れ、今回は同性の結婚を認めさせる裁判の矢面に立つ。それそれの法廷戦術や被告である同性婚を認めない人々をやり込める過程が痛快で、思わず小さく拍手してしまった。なにしろ最後には宗旨替えまでさせてしまうのだから。

判決が出てから彼らが結婚式を挙げるまでで胸いっぱいになってしまう。会場ではあちこちからすすり泣く声が聞こえる。日本でも同性婚はそれほど違和感をもたれなくなった。この10年ほどでずいぶん変わったもんだと思う。

私はこの映画のクラウドファンディングに参加した。日程が合わずなかなか観られなかったのだが、渋谷アップリンクでの最終回に間に合った。全国各地でこれから公開されるところも多い。これからのスケジュールはこちらでチェック。

『やがて海へと届く』 気持ちの底が温かくなる物語

Posted by erkazm on 11.2016 新刊書評 0 trackback


東日本大震災で九死に一生を得た作家、彩瀬まる。『暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出』(新潮社)で、その恐怖の体験を記しているが、作家としてどう昇華するか期待とともに注目していた。




あれから5年。『やがて海へと届く』が上梓された。それは私が望んでいたとおり美しくて恐ろしくて、でも腑に落ちる作品として完成されていた。
 
真奈とすみれは大学時代からの気心が知れた友人だ。3年前の大震災の前日、すみれは一人旅に出てそのまま行方不明になった。
 
すみれの恋人も家族も、彼女の死を受け入れ始めているが、真奈は未だに戻ってくるような気がしている。すみれのいないことに慣れてきた人たちを少し憎んでもいるようだ。
 
勤め先のレストランの店長が自殺し、新しい店長がやってきて仕事のやり方が一新されても、世の中は普通に回っていく。誰も好きになれないと思っていても、いつのまにか恋は訪れる。受け入れ難いと思っていても、日々は続いていく。
 
一人称の小説だが、一章おきに人物が変わる。かたや生臭い現実を過ごし、かたや夢のなかをさまよう。

死によって世界が隔たってしまったふたりの間に、ほんの一瞬だけ思考が交錯する。「フカクフカク」という呪文のような言葉は、やがてそれぞれのいるべき場所へいざなっていく。
 
不意に居なくなった大切な人は今でも旅を続けている。そして自分もいつかそこに行く。気持ちの底が温かくなる物語である。
(公明新聞 2・22)
  

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